ガラスの靴じゃないけれど


同時に荒々しくビールを飲み干した佐和子先輩と有紀ちゃんの言葉に刺があるのは、私の気のせいじゃないことを確信した。

「すいません!マッコリ三つね!」と、私の分まで勝手にオーダーをした有紀ちゃんは、サムギョプサルのお肉を焼き始める。

「もしかして若葉ちゃんの悩みって、望月さんがモテ過ぎるからとか、そんなくだらないものじゃないわよね?」

こんがりと焼けたチヂミを噛みちきりながら、そう言う佐和子先輩は迫力満点。

思わず萎縮しながらも、私は本題を切り出すことにした。

「実は私、男の人と付き合ったのって望月さんが初めてなんです。だからよくわからなくて。あの...初めての時って、痛くて怖かったですよね?」

まるで好奇心旺盛な女子高生みたいな話題だと思っていると、突然テーブルに大きな声が響き渡った。

「マッコリお待ちどうさまです!」

まさか話を聞かれちゃったかしら?と、チラリと韓流イケメンの店員さんに視線を向けると、にこやかな笑顔を返される。

恥ずかしい気持ちがさらに倍増した私は、思わず俯いてしまった。


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