ガラスの靴じゃないけれど
「許せないとかじゃなくて...初めてって痛いけれど幸せみたいな感じだと思っていたんです。でも、そうじゃなかったから...」
今までお肉を焼くことに集中していた有紀ちゃんが、突然、声を上げて笑い出した。
「若葉先輩って可愛いですね。大丈夫ですよ。何回かシているうちに、すぐに気持ち良くなれますって」
「き、気持ち良くって...」
大胆なことを言い出す有紀ちゃんを茫然と見つめていると、佐和子先輩も笑い出す。
「そうね。若葉ちゃんにアドバイスすることは、今度はシラフの時にシなさい。かな。大丈夫よ。次は優しくしてくれるって」
「そうですよね。アタシだったら、眼鏡を外した望月さんの顔を見ただけでイッちゃうかもぉ~」
「やだぁ~!有紀ちゃんったらぁ!」
気持ち良くなるとか、イッちゃうとか、盛り上がるふたりの会話について行けない私は、焼けたお肉に手を伸ばすとサンチュに包む。
そして大きな口を開けると、コリアンキッチンの看板メニューであるサムギョプサルを頬張ったのだった。