ガラスの靴じゃないけれど


望月さんから連絡がないまま迎えた、週末。

もちろん連絡を待っているだけではなく、自分から何度も謝りのメールをしようとした。

けれど、謝ったところで望月さんに抱いてしまった恐怖心が簡単に拭い去ることができるとは、到底思えない。

家に居ても望月さんのことばかり考えてしまう私が思い出したのは『気が向いたらまた遊びに来ておくれ』と言ってくれたゲンさんの言葉だった。

梅雨明けが発表されたばかりのギラギラと照りつける太陽に負けないようにと、クローゼットから取り出したのは白いショートパンツ。

素足に履くのは、爽やかなレモンイエロー色のアンクルストラップのサンダル。

そのサンダルからチラリと覗くのは、ピンク色のフットネイル。

開発事業部の溝口陽菜さんの指先に光る洗練されたネイルには程遠いけれど、これでも少しだけ頑張ってピンクのマニキュアを足の爪に塗ってみたのだ。

ピンク色の爪先がチラリとサンダルから覗くだけで、女子力がアップしたような気分になった私は、降り注ぐ日差しを受けながら光が丘駅北口商店街へ向かった。


< 149 / 260 >

この作品をシェア

pagetop