ガラスの靴じゃないけれど


25歳にもなって、尻もちをついてしまったことが恥ずかしくて堪らない。

でも、このままでいたら、さらに笑われるだけだ。

彼から視線を逸らした私は、まだ少しだけ痛むお尻を庇いながら、ゆっくりと立ち上がろうとした。

その時になって、右足だけが素足になっていることに気付く。

慌てながらキョロキョロと周りを見回していると、彼が目の前にしゃがみ込み、私が探していた物を差し出してきた。

わざわざ拾ってくれたことに感謝をしながら、それを受け取ってお礼を言おうとした。

でも、無残な姿になってしまったチェリーピンク色の革のパンプスを目にしたら......。

お礼の言葉なんて口から出てこなかった。

「これを履いて帰るのは無理だろうな」

彼の言う通り、8センチのヒールがブラブラしているパンプスを履いて歩けるはずがない。

だからといって、裸足で歩くのはもっと嫌。

いったい、どうしたらいいの?

手渡されたパンプスを見つめながら、途方に暮れてしまった。


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