ガラスの靴じゃないけれど


「ったく...こんなところで尻もちを付くなんて、ガキみたいな女だな。おい。これ持ってろ」

目の前に差し出されたのは、舐めかけの棒付きキャンディー。

「え?なんで私が?」

「いいから。ほら。早くしろ」

不機嫌そうに急かされた私は、赤とクリーム色のマーブル模様のキャンディーの棒の部分を渋々と手にした。

すると、突然、身体が宙に舞う。

何が起きたのか訳がわからない私が感じたのは、背中と膝の裏に回った彼の逞しい腕だった。

嘘でしょ?私、お姫様抱っこされているの?

初めての経験に戸惑った私は、うろたえながら足をバタバタさせる。

「おい。暴れるなって」

「そ、そんなこと言われても...あの!下ろしてください」

「あ?いいから黙って抱かれていろよ」

言葉だけ聞いたら勘違いしそうなセリフを口にした彼に、もはや言い返す言葉が見当たらない。

結局、お姫様抱っこされた状態で足をバタつかせては危ないと判断した私は、そのままじっとすることにした。


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