ガラスの靴じゃないけれど
お爺様の意志を受け継いだ彼の力になりたい。
心の奥から込み上げてきた想いを胸に抱きながら、ポストカードをひっくり返した時。
息が出来なくなるほどの衝撃を受けた。
「ひ、響さん!な、名前が!」
「ああ。シエナの広場から姿を消した彼女が座っていたベンチの上にそのカードが置いてあったらしい。彼女を探す手掛かりになればいいんだがな」
腕組みをしながら冷静に話す彼とは正反対なのは、この私。
伝えたい事実があるのに、胸にこみ上げてくるものが邪魔をして声が出てこない。
その思いが涙となって瞳から溢れ出た私の様子を見た彼は、椅子から立ち上がると驚きの声を上げた。
「ど、どうした?俺、またオマエを泣かすようなこと言ったか?」
揺らめく涙の先に見えるのは、私の前にしゃがみ込む彼の姿。
心配げな表情を浮かべる彼を安心させるために、私は首を左右に振った。
「響さん!運命です!」
「は?運命?」
震える指先で涙を拭った私は、早く彼に事実を打ち明けようとして気持ちばかりが空回りをした。