ガラスの靴じゃないけれど


「ここが再開発されることも、私がプロジェクトのヘルプになったことも、初めてこの商店街を訪れた私に響さんが気付いたことも。それから、あのタイミングでパンプスが壊れたことも、すべてが運命だったんです!」

興奮が冷めないまま、一気に話を終えた私は喜びを分かち合うために、しゃがみ込んでいる彼に向かって思い切り抱き付いた。

でも、少しだけ勢いがつきすぎたみたい。

私の重みに耐え切れずに、彼が仰向けに倒れ込んでしまったから......。

「まさか、オマエに押し倒されるとはな」

「え?」

我に返った私の目が捉えたのは、この状況を楽しむような笑みを浮かべる彼の顔。

しかも、あと数センチで唇が重なってしまいそうなほど、その距離は近い。

「オマエって意外と積極的なんだな。驚いた」

「違っ!これはわざとじゃありませんから!」

彼と触れ合っている箇所のすべてが熱を帯びたように火照り出し、鼓動が高鳴る。

慌てながら身体を起こそうとした私の背中に回ったのは、彼の大きな手だった。

「もうしばらく、このままでいろよ」

「か、からかわないでください」

「別にからかってねえよ。オマエが落ち着くまで。な?いいだろ?」

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