ガラスの靴じゃないけれど


だから私も回りくどい言い訳などせずに、望月さんに向かって頭を下げた。

「望月さん。私、運命の人と出会ってしまったんです。だからもう、望月さんの彼女ではいられません。ごめんなさい」

頭を下げている私の上から降ってきたのは、望月さんの鋭い言葉。

「へえ。その運命の人って五十嵐響のことかな?」

驚いた私が勢いよく顔を上げると、望月さんは縁なし眼鏡を中指で押し上げながらクスッと笑った。

「だからヤツと会うことも、あの店に行くことも禁止したのにな」

以前、確かに私は、望月さんとそのような約束を交わしたことがある。

でも、彼と私の出会いは運命。

望月さんとの約束を守ったとしても、その運命は変わらなかったと断言できる。

「でも若葉がヤツのことを運命の人って言い切るのなら、もう俺との修復は無理なんだろうね」

小さな声で「ごめんなさい」と言うことしかできない私が見たのは、盛大なため息を付く望月さんの姿だった。

「本当のことを言うと、またデートに誘って仲良く過ごせば、俺のことを嫌いじゃないって言った若葉の気持ちを取り戻すことなんか簡単だと思っていたんだ」


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