ガラスの靴じゃないけれど
そのことを頭から振り払うように両目をギュッと閉じた耳に届いたのは、頼りがいのある彼の言葉だった。
「大丈夫だ。若葉に怖くて痛い思いはさせない。安心しろ」
まるで私の心を透視したような彼の言葉は、強張っていた身体と心をあっという間に解きほぐしてくれた。
私の身体を引き寄せる彼に身を委ねれば、額に頬に唇に......優しいキスの雨が降って来る。
その彼の唇が耳たぶから首筋に下りてきた頃には身体が火照り、息が乱れていた。
「もう身体は温まっただろ?コートはいらないな」
彼の言葉に頷いた私の身体から、コートとスーツのジャケットがするりと脱ぎ落ちる。
そのままベッドに押し倒された私の唇を執拗に責めるのは、情熱的な彼の唇と舌。
熱くて甘いキスに応えることに必死になっていると、私の身に纏っていたものが徐々に剥ぎ取られ、また彼もその身体から次々に衣類を脱ぎ捨てていった。
もう私と彼の間を隔てるものは、何もない。
肌と肌を...唇と唇...心と心を...。
すべての想いを重なり合わせれば、ふたりはようやくひとつに結ばれる。
それは彼の言っていた通り、怖くも痛くもなく、私の身も心も悦びに導いてくれるものだった。