ガラスの靴じゃないけれど
10年前に光が丘駅の南口に大型スーパーが出店をしたことがきっかけとなり、売り上げが減少。
そして、個人商店主の高齢化も重なり衰退していったと、コピーした光が丘駅北口商店街再開発プロジェクト資料に書いてあった。
望月さんはあまりいい顔をしなかったけれど、私はパンプスが壊れるというパプニングに見舞われたことを除けば、現地の状態を確認できたことは良かったと思っている。
光が丘駅北口商店街再開発プロジェクトが成功すれば、ゴミを漁る野良猫はいなくなる。
そして仕事を終えた女子社員たちがショッピングを楽しみ、待ち合わせをした恋人たちがディナーに舌鼓を打ち、活気あふれる街になるはず。
少しだけ胸が痛むのは、私の壊れたパンプスを直してくれると約束した、五十嵐響が営んでいる靴工房・シエナが立ち退きを迫られること。
今は亡きお爺様との思い出が詰まったシエナが跡形もなく壊され、その跡地に高層ビルが建設されることを、彼はどう感じているのだろうか。
駅名通りに光り輝く建築模型を見つめながら、私はコピーを続けた。