ガラスの靴じゃないけれど
こんなにハッキリと仕事を褒めてもらったのは初めての経験で、喜びが胸一杯に広がった。
「望月さん。ありがとうございます」
「...そういう素直なところに...惹かれる」
「え?」
デスクに寄りかかっていた身体を起した望月さんは、私の手からモップを取り上げるとロッカーに片付ける。
そして足音を響かせながら、一歩一歩ゆっくりと私に近寄ってきた。
望月さんの足音とシンクロするように、私の鼓動もドキドキと音を立てる。
これから何が起きるのか。それとも何も起きないのか......。
期待と不安を胸に抱えながら、歩み寄って来る望月さんの姿を目で追った。
「一条さんって彼氏いるの?」
突然、仕事と無関係なことを聞くのは、どうして?
これじゃあ、まるで......。
期待だけが大きく膨らんでいく中、私の瞳を真っ直ぐに見つめる望月さんに向かって答えを返した。
「...いません」
「だったら、俺と付き合ってくれないかな?」