ガラスの靴じゃないけれど
エレベーターの階数表示を見つめている望月さんの無表情な横顔からは想像できない情熱的な指先の動きは、私の身体を熱く火照らせた。
きっと望月さんは、私の反応を楽しんでいる。
だから望月さんを見習って、冷静を装うために無表情のままエレベーターの階数表示を見つめようとした。
けれど、それは恋愛初心者の私には、ちょっと高度なテクで無理だった。
執拗に指を絡められた私は、もう、どうしたらいいのかわからなくてパニック寸前。
ただ、恥ずかしさだけが高波のように押し寄せてきて、俯くことしかできなかった。
結局、今回も望月さんの成すがままになってしまったと思いながら、ランチを終えるとメールが届く。
差出人はついさっき、私を弄んだ望月さん。
佐和子先輩と有紀ちゃんと食堂の前で別れた私は、普段利用しない階段を下りると、誰もいない踊り場でメールを開く。