ガラスの靴じゃないけれど


住民説明会が行われる場所は、光が丘駅北口商店街の一角にある町内会館。

先週は明かりが消えていたから、その存在に全く気が付かなかったけれど、町内会館がある場所は山本時計店の二軒隣だった。

「お疲れ様です」

「おお。一条さん。待っていたよ」

私を出迎えてくれたのは、忙しく動き待っている松本チーフ。

「望月!一条さんに受付の説明を頼む」

「はい」

町内会館の奥から姿を現した望月さんも、説明会のタイムテーブルを片手に忙しそうだ。

閉店した呉服屋さんをリフォームした町内会館は畳敷きで、すでに折り畳みのローテーブルと座布団が配置済み。

松本チーフは、そのローテーブルの上に出席者の方々が飲むペットボトルのお茶を置いていた。

「一条さん。受付は外だから」

そう説明した望月さんは一段高くなっている畳敷きのスペースから降りると、革靴を履いて外に出る。


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