ガラスの靴じゃないけれど
五つ年上の望月さんに釣り合うような、魅力的な女性になることを密かな目標としている。
私にとって嬉しくない言葉の連打に、気分が落ち込んだ。
「そんなに私って学生っぽいですか?」
ほぼ、半泣きに近い状態で隣にいる望月さんを見つめれば、小刻みに肩が震え出した。
「一条さんって苛め甲斐があるね。ほんと、可愛いよ」
クスクスと笑い出した望月さんを見つめれば、ようやくからかわれていたことに気付く。
意地悪な望月さんに対して、ますます頬を膨らませたい衝動に駆られた。
けれど、思いがけず『可愛い』と言われたことが嬉しくて、からかわれたことなどすぐに帳消しになってしまう。
「それから遅れて来る人がいるかもしれないから18時30分までは受付に居てくれるかな。その時間が過ぎたら気を付けて帰ること。いい?」
「はい」
「じゃあ、俺は奥に戻るから」
欲を言えば、もっとふたりきりの時間を楽しみたい。
でも、今は仕事中。
町内会館の奥へ戻っていく望月さんの背中を見送った私は、気持ちを切り替えるように背筋を伸ばした。