ガラスの靴じゃないけれど


光が丘駅北口商店街再開発プロジェクトが落ち着くまで、デートはおあずけだと思っていた。

それなのに、昨日の夜。望月さんから突然、デートのお誘いがあったのだ。

----バスルームから出て、自分の部屋に戻るとスマホが音を立てていた。

「もしもし?望月さん?」

「ああ。若葉。今日はお疲れ様」

「お疲れ様です。望月さんは今帰りですか?」

「ああ。電車から降りて家に向かっている途中。あのさ、急だけど、若葉?明日、用事ある?」

「いえ。何も」

「そう。だったらさ、明日、俺とデートしてくれないかな?」

もちろん、私の返事はYES。

本当は、ゆっくりと身体を休めて欲しいと思った。

でも初めてのデートの誘いを断るなんて、私にはできなかった。----

ハンドルを握る望月さんの姿を見るのは、もちろん初めて。

狭い空間でふたりきりの時間を過ごせるなんて夢みたいと、喜びを噛みしめていると、望月さんがチラリと私に視線を向けた。

「褒められたお返しじゃないけれど、そのワンピース。良く似合っているよ」

「本当ですか?」

「ああ。反則なくらい可愛いよ」


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