ガラスの靴じゃないけれど


望月さんの好きな食べ物は、カレーと焼肉とお寿司。

望月さんの趣味は、サッカー観戦。

望月さんの初恋は、小学校2年生の時。

今まで知らなかった望月さんを知ることができたのは、たくさん会話を交わしたから。

行列に並んだ時も。向き合ってカレーを食べた時も。

そして海岸をのんびりと散歩した時も。言葉を交わしては笑い合った。

黙っていたのは、水平線に夕日が沈んでいくのを見つめながら、唇を重ね合った時だけかもしれない。

本当だったら、もっと望月さんと一緒に居たかった。

その想いは、望月さんも同じだったみたい。

「若葉。この後だけど...」

夕日が沈み、さっきまで光り輝いていた海も、今は暗がりが広がっている。

「この後?」

「うん。そのさ...」

その先の言葉を言うのを躊躇ってしまうのは、これでデートが終わってしまうのが寂しいから?

寂しいのは私も同じ。

望月さんが聞きづらいのなら、私からハッキリさせなければならないと思った。


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