ガラスの靴じゃないけれど
「望月さん。うちの門限は10時です」
「え?門限?」
私の言葉を確認するように、望月さんは慌てながら腕時計に視線を向けた。
今はまだ太陽が沈んだばかりだけれど、渋滞していたら門限に間に合わなくなってしまうかもしれない。
この後も、ずっとここに居たいと思ってくれた望月さんには悪いけれど、そろそろ帰らなければならない時間だ。
「じゅ、10時って...今どきの高校生よりも厳しくないか?」
「え?そうなんですか?」
「...可愛い若葉に今まで彼氏がいなかった理由が、なんとなくわかった気がする」
望月さんはため息交じりに頷きながら納得していたけれど、私には何が何だか、ちっともわからない。
「どういう意味ですか?」
「ん?何でもない。それより若葉。最後にもう一度キスさせて」
ストレートなお願いを口にした望月さんは、私が返事をするよりも早く、唇を荒く塞ぐ。
徐々に熱を帯び始めるキスは、今まで交わしたどのキスよりも長くて深かった。