ガラスの靴じゃないけれど
チカチカと切れかかっている街灯の元で、コンビニの袋からはみ出した残飯を漁る黒猫が、ふと動きを止めて私をジッと見つめる。
その金色の瞳は威圧的で、思わず足がすくんだ私はその場に立ち止まってしまった。
今は日曜日の午後5時。
本当ならばショッピングを楽しむ家族連れや若者で、賑わいを見せてもいい日時なのに......。
この場所はまるで深夜のように人が見当たらず、静まり返っている。
閉じられたシャッターだけが、かつてこの場所が商店街だったことを辛うじて証明しているように思えた。
今、私がいるこの場所は光が丘駅北口商店街。
自分の地元でもないこの場所を訪れた目的は、ただひとつ。
あるプロジェクトの視察をするため。
でも今回の視察は、業務の一環ではない。
私が自主的に行動したことなのだ。
相変わらず私を睨むように見つめている黒猫に向かって、すくんでいた足を一歩踏み出した。
すると黒猫は、あっさりとその場から姿を消す。