ヴァイオリンとフルート
　屋上へ着くと生徒は誰一人いなくてシーンと静まり返っていた。
　少し寂しいような気のする屋上だが、景色は凄く良い、少し薄い青色の空で雲は一切なく、心地よい風が四人を通り過ぎていく太陽の光が四人をキラキラと照らしていた。
　ふと、梨恵が屋上の感想を漏らした。

「誰もいないね。」

「でも、景色はとってもいいだろ？」

「僕はとっても気に入ってる。」

　涙菜も何か言おうとしたが、強度の人見知りが邪魔してなかなか言えなかった。
　そして涙菜が憂鬱なのはもう一つ理由があった。
　涙菜はとても小さい時から霊感があり、今もこの屋上の隅一人いるのだ。如何しているのか分からないが、長い髪の女の子が立っているのであった。
　しかも、その度に霊に話しかけられて、霊を成仏に導いている。いつも、苦労しているのだ。
　涙菜はその霊をみて大きく溜息をした。

「夕闇さん？どうしたの？」

　また突然話しかけられて肩が思いっ切り跳ねた。

「涙菜？」

「如何した夕闇？」

「・・・う、う・・・ん・・・な、何でもない・・・。」

　涙菜はそう言ったが、顔が笑っていないので、三人が涙菜の顔を心配そうに覗き込んだ。

「「「本当に大丈夫？（なのか？）」」」

　三人の声が重なってとても大きくなり、涙菜はとってもビクついた。

「ほ、本当だよ。」

　今度は笑って言い返せた。
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表紙・目次

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