背中合わせの恋
夏もだいぶ遠のいた空を見上げた。
うろこ雲が列をなす空に目を瞑る。
―あの日、沖田さんが労咳だと宣告されてから一つの季節が過ぎ去ろうとしていた。
未だ前戦で戦い続けている沖田さん。
彼にとって病の宣告など、とるに足らないことだったのだろうか。
…いや、もしかしたら病に侵されているからこそ、命の限りを尽くそうと鬼気迫る思いで、戦場に立ち続けているのかもしれない。
ふと、感じた視線に目を開ける。
「(…あ)」
そこには縁側の柱に体を預けて、こちらにじっと視線を送る沖田さんがいた。
絡まる視線に、途端に動けなくなる身体。
そんな私を知る由もなく、沖田さんはニッコリと笑みを浮かべ、どこかへと姿を消していった。
ちゃぷん、と桶の水が小さく波をたてる。
桶の中を覗きこめば、なんとも情けない表情をした私と目が合った。
それに無理やり笑みを向ける。