背中合わせの恋
あの日以来、視線を感じればそこには必ず沖田さんがいた。
それはきっと、私を見張るため…。
私が誰かに告げ口するのでは、と案じているのだろう。
痛む胸を押さえるように、もう一度、隊服を皺がよるほど抱きしめた。
「陸…?そんなところにしゃがみこんでどうした?」
「っ!ひ、土方さん!」
背にかけられた声に驚いて立ち上がれば、土方さんが不思議そうな顔ですぐ後ろに立っていた。
「その隊服…」
土方さんの視線が、私が握りしめる隊服に止まる。
「あ、い、いえ、これは…」
私は土方さんの目から隠すように、沖田さんの隊服を背に隠し、後ろ手に丸めた。
「…なぁ、陸」
「は、はい」
土方さんは少し目を伏せながら、言葉を選ぶように私の名を呼んだ。
「総司のことなんだが…」
「っ、」
沖田さんの名前が出ただけで、心臓が跳ねる。
ドキドキと波打つ心臓を無視して、声が震えないように「何でしょう?」と返した。