背中合わせの恋
長めの前髪が邪魔をして、沖田さんの表情が見えない。
「君は…、」
絞り出すようなその声は、少し震えているようにも聞こえる。
だけど顔を上げた沖田さんの顔にはいつもの笑みが浮かんでいた。
「君は意外と律儀なんだね、嫌いな人との約束を一々守るなんて」
「きらい…?」
大きく耳に響いたその言葉。
繰り返してみるけれど、目の前で笑う沖田さんから発せられたその言葉の意味が、上手く理解できない。
沖田さんを見上げる。
沖田さんは変わらず笑っていたけれど、あのときのように瞳だけはすがるように私を見ていた。
「だって、陸ちゃん僕のこと嫌いでしょう?」
「え……」
その瞬間、あんなにもギュッと握りしめていた沖田さんの隊服を、はらりと地面に落としてしまった。
沖田さんは落ちていく隊服を目で追いながら、ゆっくりと近づいてくる。
「はい、これ落としたよ」
落とした隊服を拾い上げた沖田さんは、やっぱり笑っていた。
どうして、貴方は笑っていられるんですか?