背中合わせの恋
綴る想い
それからどれだけ経っただろう。
月日の流れというものは時に残酷で、確実に病は沖田さんの体を蝕んでいっている。
歩くこともままならず、沖田さんはあれだけ欲していた隊務からも外され、武士として使うはずだった命のほとんどを、布団の中で使うことしかできなくなっていた…。
「陸」
「はい」
名を呼ばれ振り返れば、土方さんが難しそうな顔をして私に巾着を差し出してきた。
その行動の意味が分からず、首を傾げて土方さんを見上げる。
「あの…?」
「買ってきてほしいもんがあるんだが」
「ああ、お使いですか?何を買ってきましょうか?」
巾着を受け取るように手を伸ばす私に、土方さんは一瞬迷うように視線を外して、それから静かに声を落とした。
「金平糖」
「……え?」
「総司のやつに、金平糖を買ってきてくれ」
ヒュッと息をのむが、すぐに平静を装って巾着を受け取る。
「、承知しました。金平糖ですね」
「ああ、総司に渡してやってくれ。お前からな」
「私から、ですか…?」
できればそれは遠慮したいのだけど…。
そんな意味を込めながら土方さんを見上げる。
でも土方さんは私の視線の意味に気付いているのかいないのか、さっさと行けと言わんばかりの目を向けてきた。