背中合わせの恋

綴る想い






それからどれだけ経っただろう。

月日の流れというものは時に残酷で、確実に病は沖田さんの体を蝕んでいっている。

歩くこともままならず、沖田さんはあれだけ欲していた隊務からも外され、武士として使うはずだった命のほとんどを、布団の中で使うことしかできなくなっていた…。





「陸」

「はい」


名を呼ばれ振り返れば、土方さんが難しそうな顔をして私に巾着を差し出してきた。

その行動の意味が分からず、首を傾げて土方さんを見上げる。


「あの…?」

「買ってきてほしいもんがあるんだが」

「ああ、お使いですか?何を買ってきましょうか?」


巾着を受け取るように手を伸ばす私に、土方さんは一瞬迷うように視線を外して、それから静かに声を落とした。


「金平糖」

「……え?」

「総司のやつに、金平糖を買ってきてくれ」


ヒュッと息をのむが、すぐに平静を装って巾着を受け取る。


「、承知しました。金平糖ですね」

「ああ、総司に渡してやってくれ。お前からな」

「私から、ですか…?」


できればそれは遠慮したいのだけど…。


そんな意味を込めながら土方さんを見上げる。

でも土方さんは私の視線の意味に気付いているのかいないのか、さっさと行けと言わんばかりの目を向けてきた。

< 18 / 20 >

この作品をシェア

pagetop