背中合わせの恋
慶応元年初夏。
近藤局長とも親交の深かった松本良順による新選組の健康診断が行われたその日、沖田さんに告げられたあまりにも残酷な事実。
――それは労咳。
私がこれを知ったのは本当に偶然だった。
庭の掃き掃除を終え、道具を片付けようと裏庭に周った時、沖田さんの声が聞こえてきたのだ。
「それで、用とは何でしょうか?」
「お前さんの診断結果だが…」
「はい」
重苦しいその空気に、思わず聞き耳を立ててしまった私。
息を殺し、そっと物陰から様子を窺う。
そこには私に背を向けるように長椅子に腰掛ける松本先生と沖田さんがいた。
何の話をしているのだろう。
どうしようもなく嫌な予感がして、私はそのままじっと耳を澄ませた。
「お前さんは労咳だよ」
「っ!?」
出かかった悲鳴を両手でなんとか押さえる。