背中合わせの恋
今、先生は何と仰った…?
労咳?
労咳ってあの死病と言われている?
誰が?
沖田さんが?
動揺で震えている私の耳に、笑っているのかと勘違いしそうなほど明るい沖田さんの声が届いた。
「ああ、やっぱり労咳でしたか。そうじゃないかと思っていたんですよ」
「何だ…知っていたのか?」
驚く松本先生の声。
それに明るい声のまま答える沖田さん。
「いえ、ただ噂で聞いていたとおりの症状ばかりだったので、もしかして…と思っていただけです」
「労咳か、困ったなぁ」なんて笑いながら言う沖田さんに、動揺しているのは私だけなのかと訳が分からなくなる。
「笑い事ではないぞ。今すぐ空気の綺麗な場所で、精のつくものを食べて療養を「それはできません」…沖田くん?」
背を向けている沖田さんが空を仰ぎ見る。
私もそちらに目を向けてみるけど、沖田さんがその空に何を描いているのかは分からなくて、無性に悲しくなった。