背中合わせの恋
「すみません、先生。でも、それって新撰組を離れて療養しろってことですよね。…僕はここを離れるわけにはいかないんです」
「何を言っている!療養すれば治るかもしれないんだぞ」
語気を荒げる先生に対し、沖田さんは静かな口調で口を開く。
「治る『かも』ですよね。絶対に治るってわけじゃない」
「それはそうだが…しかし、」
尚も療養を進める先生に、沖田さんは静かに首を振る。
「僕は曲がりなりにも武士です。…この命は、最後まで武士として使いたい」
ギュッと胸元を握る仕草が背中越しに見えた。
「病を患っているのならなおさらです」
「……」
柱に額を強く押しあてる。
そうでもしなければ、すぐにでも足から崩れ落ちてしまいそうで。
すぐにでも沖田さんのもとに歩みより、その背を抱きしめてしまいたくなりそうで…。
沖田さんと先生の話を遠くに感じながら、震える息をそっと吐き出した。
どうか、これが悪い夢でありますように…。