背中合わせの恋
「盗み聞きなんてする悪い子は斬っちゃおうかな」
「っ!」
すぐ近くで聞こえてきた声に、肩を跳ねさせて顔を上げれば、沖田さんがいつもと同じ笑みを浮かべて私を見下ろしていた。
いつのまにか松本先生との話は終わっていたようで、周りには誰もいない。
「っお、沖田さ、」
「ハハッ冗談だよ。そんなに恐がらないで」
「、…」
吸い込んだ空気に押し返されたかのように言葉が詰まる。
そんな私に沖田さんが微かに笑んだ。
「…少し、話をしようか」
「え、」
「ほら、こっちこっち」
そう言って、沖田さんは先程まで先生と座っていた長椅子に腰掛けた。
「はい、ここに座って」
ポンポンと、自分の隣を叩いて座るように促す。
「失礼、します…」
ゆっくりと沖田さんが示した場所よりも遠くに腰掛ける。
それを見て、沖田さんが少しだけ悲しそうに微笑んだように見えた。