背中合わせの恋


「…松本先生との話、聞いてたんでしょう?」

「……」


声に出す変わりに小さく頷く。


だって、声に出してしまったら、沖田さんの病は本当なんだと認めなければいけない気がして…。


膝の上で震える両手をギュッと握りしめた。


ふぅ、と頭上で沖田さんが息を吐く。


「まさか陸ちゃんに聞かれてしまうなんてね」

「っ申し訳、ありません。…その、歩いていたら聞こえてしまったもので」


視線を泳がせながら、なんとかそれだけを口にする。


でも動揺で震える声はどうすることもできなかった。


「…まぁ、こんな誰でも通るような場所で話してた僕も悪いんだけどね」


組んだ足の上に肘をついて、笑みすら浮かべて話す沖田さんは普段通りで、


「ねぇ、陸ちゃん」

「…はい」


さっきの話はやっぱり悪い冗談だったんじゃないか、なんて考えが一瞬思い浮かんだ。


けれど…



「僕の病のこと、絶対に誰にも言わないで…」



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