背中合わせの恋
沖田さんが去った後、今まで彼が座っていた場所にそっと手を添える。
そこはまだほんのりと彼の温もりを残していて、スゥと私の頬に涙を滑らせた。
本当は、療養して下さい、と言いたかった。
病が治る可能性が、ほんの一握りでもあるのなら。
『生きる』選択をしてほしかった…。
「っ、」
だけど彼は戦い続けることを選んだ。
刀を…選んだ。
それはとても沖田さんらしいと思う。
濡れた瞼を閉じて、武士として死ぬまで戦い続ける沖田さんを想像してみる。
それは呼吸をすることが当たり前のように、容易に想像できてしまった。
はらりと、また一筋の涙が頬を伝う。
…心が、震えた。
どれだけ頭では生きてほしいと願っても、心は正直に武士の沖田総司に心を震わせてしまう。
私は武士である沖田総司に、どうしようもなく惚れてしまっているのだ…。