女嫌いな生徒会長の恋
ひとりになった日 円side
赤、赤、赤。真っ赤な液体がそこかしこを染める。
声、泣き声、叫び声。何て言っているのか分からない。
「円」
名前を呼ばれた気がする。そうだ。私は円。今日は誕生日で、みんなで買い物に行く途中で。
「お父さん、お母さん? 和も」
どうしてみんな血まみれなの?
「ケーキ、ごめんな。潰れたかな」
お父さん。そんなことはどうでもいい。どうして血が出ているの?
「お父さ、ん」
私が、やったことなの?
ああもうダメ。前が、よく見えない。
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「ねえ、本気なの?あなた」
「仕方がないだろ。親父もお袋も老人ホームだし。他に親戚もいないしな」
叔父さんと叔母さんの声がする。
「川口さん。ちょっとよろしいでしょうか」
これは紫苑のお父さんの声だ。どうして孝おじさんがいるのだろう。
「円ちゃんのことですが。私か二階堂さんかが引き取りたいと考えております」
二階堂って麻美の家? 引き取るってどういうこと?
「いえいえ。ご心配には及びません。川口の家で引き取らせていただきます。一応、血のつな
がりもあることですし」
「一応とはどういう意味で?」
あ。孝おじさんが怒った。おじさん、笑顔のまま怒るから凄く怖いんだよね。
「確かに私どもは円ちゃんと血のつながりはありません。しかし、家族として接してきたつも
りです。慎一とすみれさんの分まで、愛し育てていくことができます。恐れながら、貴方がそ
うできるようには、私には思えないのです」
「失礼な。いくら菅原さんでも言ってはならないことというものが……」
ちょっと待って。慎一とすみれってお父さんとお母さんのこと? 引き取るってまさか。
「おと、うさん。おか、あさん?」
喉がカラカラに渇いて上手く声が出ない。
「円ちゃん! 大丈夫かい? そのまま寝てていいから」
孝おじさんが、起き上がろうとする私を止める。
「おじ、さん。おとう、さん達は?」
ねえ。なにがあったの。みんなは無事なの?教えてよ。
「円ちゃん、落ち着いて聞くんだよ」
私を宥めてから、おじさんは息を吸った。
「お父さんとお母さんと和ちゃん、そして君は、交通事故に遭ったんだ。すぐに病院に運ばれ
たんだが……慎一もすみれさんも、和ちゃんも、病院で息を引き取った」