女嫌いな生徒会長の恋
「あら、円ちゃん」
「円、久しぶり」
「大きくなったなあ」
「良かった。一人で来れて偉いね」
綺麗な顔の人達が、一斉にこちらを向き喋りだす。
「紫苑、麻美。おじさんも、おばさんも。どうしてここに」
そこには、菅原家と二階堂家が集まっていた。皆、顔だちが整いすぎているため、とてつもなく浮いている。二階堂家に至っては、麻美の上に三人も兄がいるため、凄い人数である。
「早く円かに会いたくて」
麻美と紫苑が言い、
「円ちゃんが一人で来れるか心配で」
菅原と二階堂のおじさんが言い、
「母さん達と俺らは、父さんたちがやらかさないか心配で」
麻美の一番上の兄、樹が苦笑しながら言った。
「うう……」
やばい。泣きそうだ。
「あーあ。お父さんたちがウザいから円が泣いちゃったじゃない」
「ええ! 円ちゃん、ごめん。泣かないでおくれ」
麻美の毒舌に一家の主がやられている。
「ち、違う。嬉しくて、その」
私が答えると、二階堂ブラザーズの目が光った。
そして抱き潰される。
「ああ。円はやっぱり可愛いな」
「麻美と違って素直だし」
「大きくなって綺麗になったよね」
苦しい。でも懐かしいな、この感じ。うう。やっぱり苦しい。
「ちょっと、離れなさい!」
麻美が怒り、紫苑も加わって私を引っ張り出した。
「兄さん。セクハラよ」
「セクハラって。円は妹なのに……」
「だまらっしゃい」
ああ。いいなあ、この感じ。
「大丈夫? 円」
紫苑が微笑みながら訊いた。
「うん。なんか、家族っていいなあって、思って」
笑顔で、でも涙がでてくる。
「楽しい?」
「とっても。でも涙が、止まらない」
「いいよ。嬉し泣きなら」
優しいなあ、紫苑は。
「ねえ。そろそろ私たちにも円ちゃん触らせてよ」
「そうだぞ。早く父さんたちにも……」
おばさん達に便乗したおじさん達は、麻美に黙殺された。
「紗也おばさん、由里おばさん、久しぶり!」
私はおばさん達に抱き着いた。
「綺麗になったわね」
「すみれに……お母さんにそっくりよ」
「……ありがと」
お母さんと紗也おばさん達は、高校時代からの友人だ。
お母さんに似てきたと言われ、とても嬉しい。
「もう高校生になるのね」
「私達が出会ったのも高校生の時だったわ。私が孝さんと出会ったのも、由里が修さんと出会ったのも、すみれが慎一さんと大恋愛をしたのも。円ちゃんもいい出会いがあるはずよ」
その後も恋愛話に花を咲かせ、大分疲れてきたころに、紫苑と麻美による助け舟が出された。
「さすがに疲れたんじゃない?」
麻美が苦笑しながら問う。
「少し。でも本当に楽しかったから。学校でもよろしくね、先輩」
「先輩よりお兄ちゃんって言ってほしいかな」
紫苑がふざけて言う。
「紫苑のことお兄ちゃんって呼んだら、うちのアホどもも便乗するわよ」
麻美が吐き捨てた。
「お兄ちゃんがいっぱいいて、嬉しいよ?」
一人じゃないって、思えるから。
「円……もう本当に可愛いわね!」
麻美が瞳に少し涙を溜めて笑った。
「じゃあ、お兄ちゃんって呼んでくれる?」
「心の中で呼ぶね?」
ええ、と紫苑が肩を落とし、麻美と二人で笑いあった。
皆が帰ってから、明日の入学式の準備をした。