女嫌いな生徒会長の恋
求めていた人 紘side
「先輩、私と付き合ってください」
「俺のどこがいいの?」
「その、か、格好良いところが」
「無理だ。君とは付き合えない」
「どうして……」
「君が俺を好きじゃないから」
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「あ、紘様よ」
「今日もお美しいわ」
ああ。女は皆こうだ。俺に媚びてばかり。
……なんだこの女。
「おい、邪魔だ。失せろ」
目の前にやたら挙動不審な女子生徒がいる。
「聞こえないのか」
「す、すみません」
これだから女は嫌なんだ。
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「会長。何イライラしているんです?」
二階堂がため息を吐く。
「まあ、十中八九‘‘女ってうるせえ’’とか思っているのでしょうが」
「……まあそんなところだ。それより司はまだか」
生徒会室の扉を開くと、今朝の女子生徒がいた。
「何故ここにいる」
「円ちゃん。どうしたの。早くしないと血が」
「うう……」
「!?」
何泣いてるんだ!?
「痛い? 痛いの、円ちゃん!?」
女の手を見ると、ハンカチが血で染まっていた。
「円! どうしたの!?」
二階堂が出てきた。
俺と司。泣いてる女。
絶対誤解される。どうやら知り合いらしいし。
「あ、麻美ぃぃ」
女は二階堂に抱き着いた。あの二階堂に。
「会長、司先輩。円を泣かせましたね……」
ほら、やっぱり。一体何者だその女。
「ち、違うの麻美」
女は一応否定してくれた。
「円、ケガしてるじゃない。早く入って。手当てするから」
おい二階堂。謝罪はないのか。
「で、どうしたの、このケガは」
包帯を巻きながら二階堂が問う。
「長くなるから……」
女は渋っていたが、二階堂に促され、話し出した。
それはいつものいじめだった。
「つまり、会長のせいで円がイジメられていると」
二階堂がそう言って怒る。
今回はその女に失せろと言っただけなのだが。
「会長さんって、迷惑なイケメンだな」
え?
今なんて言った、この女。
「あ、すみません! つい心の声がっ」
「円ちゃん、フォローになってないから」
女は見るからにあたふたしている。
しかし初めての経験だ。こんな女もいるのか。
「お前は俺を見て何も思はないのか」
「思うって、えと。きれーだなあとか」
ああ。やっぱりな。こいつも同じか。
何故かがっかりしている自分に驚く。
すると女はムッとした顔で言った。
「あとアレですね。怖いです。すでにトラウマです。ちなみに人を見下すような眼はどちらかというと嫌いですっ」
俺は耳を疑った。今、こいつ嫌いと言ったか?
「な、何ですか。会長さんが訊いたんじゃないですか」
女は急に怖気づく。
面白い。
こいつをもっと知りたい。
「名前は。お前の名前」
さっきから二階堂と司が呼んでいたが、こいつの口から聞きたい、と思った。
「川口です」
川口……そう来るか。まあいい。ゆっくりでいいのだ。
「私教室に戻りますね」
「川口、大丈夫か」
川口は笑った。
なぜ笑えるのか。まるで慣れていることのように。
「その、すまなかった。俺のせいで」
川口は目を丸くしている。
「何を驚いているんだ」
「会長さんって謝るんですね」
「川口は一体俺を何だと思っているんだ」
「意地っ張りな子供、ですかね」
!!
「あ、年上の方に子供だなんてすみませんっ」
はは。川口はつくづく面白いな。
「いや、いいんだ。初めて言われた。川口は驚くほど素直だな」
自然に笑みがこぼれた。
「会長さん、笑うと可愛いですね」
!?
どこまで俺を驚かせたら気が済むんだ。
「じゃあ、もう行きますね」
川口が生徒会室を後にした。
「会長」
「紘」
二階堂と司が何か言いたげにこちらを見ている。
「恋してますね」
「円ちゃんが好きなんだね」
「ああ。恐らくな」
川口のことをもっと知りたい。笑った顔が見たい。
「でも会長。円にはうるさい兄たちがついていますから、大変ですよ」
「兄がいるのか」
「いえ。血はつながっていないのですが。私の兄たち三人と、二年の菅原紫苑が円かにべったりなので」
麻美がため息を吐く。
血のつながらない兄なんて、ただの男ではないか。
「案外、ゆっくりできないのかもな」
菅原紫苑、か。