【完】『道頓堀ディテクティブ』
2 ピッチの飛び将軍
雨上がりの蒸し暑い夕方、大二郎は懇意の生玉の寺町にある寺の住職のもとへ、代表である父の代理で外出した。
檀家の法事の打ち合わせが済むと、
「確か大二郎くんには探偵の知り合いがおったと思ったんやが」
そう切り出すと、
「うちの古くからの檀家さんで、探偵を頼みたいと言ってる人があるんやが、紹介してやってはもらえんやろか」
というのである。
「取り敢えず持ち帰って訊いてみます」
といった話になり、その話を穆に伝えてみた。
ところが。
「どんな依頼人か分からんから、返事のしようがない」
穆は言った。
当たり前であろう。
さらにその話を住職に伝えると、
「一理ある」
と言い、大二郎から渡された名刺を懐にしまった。