【完】『道頓堀ディテクティブ』

夜。

紹介された鷹岡瑠璃子の娘がいるマンションは、芝浦の東京タワーが見える海辺にある。

「やっぱり芸能人ってスゴい場所に住んでるんですね」

姉のゆりあが芸能界を目指した理由が、まりあは少しだけ分かるような気がした。

「しかし東郷先生の孫が、鷹岡まなみとはなぁ」

通称タカマナとファンから呼ばれているアイドルで、ノーブルな雰囲気と鼻筋の隆い顔立ちは、あまりアイドルらしくはなかったが、逆にそれが人気の理由でもあったらしい。

それにしても。

「あのマネージャーだかって男の人の態度、超ムカつくんですけど」

まりあは怒りに任せた口ぶりで言った。

まるで人をゴロツキ扱いにでもするかのような、木で鼻をこくった態度で、

「言い掛かりはやめていただきたい。さもないと警察を呼ぶことになります」

という対応であったのである。

が。

「まぁ相手にすれば、こういう話でもスキャンダルになるんやろな、きっと」

無機質な言い方を、あえて穆はした。

「…悔しくないんですか?」

口では怒っていたが、まりあの目は悔しさがにじんで涙に潤んでいる。

「そら腹は立つ」

穆は幼子を諭すように、

「せやけど、これがうちら探偵の限界や」

こういう出来事も、報告の対象である。

「表沙汰になれば、ワイドショーが騒ぐのは明白や。せやが」

相手は関西画壇の大御所である。

「どう出るかは、まぁ事務所の能力次第やな」

まりあの分からない展開を、穆は遠い目線で見つめているようであった。



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