【完】『道頓堀ディテクティブ』
大二郎の四十九日の納骨が終わってしばらくした頃、
「久保谷くん、おるかな?」
そうやって訪ねてきたのは、東郷忠である。
「はい、少々お待ちください」
まりあの取り次ぎで穆が出てきた。
「ご無沙汰してます」
「しばらく静ママの店に来とらんっちゅうから様子見に来たんや」
秋月静のことらしい。
「立ち話もなんですから、どうぞ」
「いや、今日はちょっと久保谷くんに会わせたいのがおってやな」
気づくと東郷の背後に人がある。
「…はじめまして」
見た。
驚いたなどというどころではない。
鷹岡まなみがいる。
「まなみのやつ、奈良までわざわざ来たんや」
単独で来たらしい。
「今回の件では大二郎くんのこともあったからなぁ」
しみじみした口調で東郷はつぶやいた。
「お参りだけでもしとこうかと思ってやな」
「そうでしたか」
穆も大二郎の夕陽ヶ丘の菩提寺は知っている。
「ご案内します」
堺筋まで出ると、タクシーを拾って六万体町で降り、階段になっている口縄坂を少し下った。