【完】『道頓堀ディテクティブ』

その頃ミナミを含めた道頓堀や鶴橋、上本町や瓦屋町のあたりで、相次いで公務員ばかり遺体となって見つかる事案が、連日テレビを賑わせていた。

なぜかというと。

どれも遺体にはムクゲの花が添えられてあったからである。

「ムクゲ殺人事件」

という変な見出しまでついて、週刊誌なんぞ飛ぶように売れている。

さらに。

穆が茉莉江に会った数日後、今度は府警の本部に近い馬場町から大阪城の公園に入った一帯で、遺体が発見された。

「これは、警察への挑戦であります」

記者会見で担当が軍人よろしく絶叫するのを、小学生がクラスで真似するほどの持ちきりの話題となっていたのである。

むろん。

警官ですらない穆は新聞で知る程度である。

「穆さんは、どう思いますか?」

まりあが訊いてきた。

「なんでムクゲでなければならんのか、今一よう分からん」

穆は首をかしげた。

「ムクゲってハイビスカスみたいな花なんですね」

まりあは図鑑を開いていた。

「あぁ、これか」

これならよくあちこち咲いてる、と穆も言ってから、

「まぁこれ以上は調べようがないわな」

断片的では推理のしようがなかったらしかった。


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