【完】『道頓堀ディテクティブ』
本町、周防町、恵美須町のそれぞれの警察署から人を出して、合同の捜査本部が組まれることが決まったのだが、

「容疑者は花をメッセージにしている」

それが何のメッセージかは分からん、というのがもっぱら本部の内々での噂で、とりわけ馬場町の件から遅れて加わった本町署の連中のうちには、

──あんなんじゃ、捕まるわけなかろうが。

としたたか放言し、顰蹙を買ってしまう始末の者まで出る有り様であった。

そうした話題は、一瀬はるかがいる新大阪日報の記者クラブにも入ってきており、

(こういうとき穆さんなら)

どうするのであろうかとふと思案することもあった。

いっぽう。

本町署の花島茉莉江はというと、ムクゲの花以外何も物証らしい物証が出てこないところに疑問を抱いていたようで、

「そもそも何でこんな変な事件を起こすんだか」

と、苛立ちをあらわにした様子で、アルミの灰皿を床に叩きつけたりもした。


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