【完】『道頓堀ディテクティブ』
6 みなみとまなみ
一瀬はるかがいる新大阪日報の紙面によると、容疑者の貴島みなみは難波界隈を拠点とする、いわゆるご当地アイドルの元メンバーという衝撃的な事実であった。
紙面には次のようにある。
「不遇な家庭環境を乗り越えてアイドルとなったが、卒業後は転落の一途をたどった」
が。
穆が調べてみると、凄絶な過去が明らかになってきた。
まず貴島みなみが、連続婦女暴行事件の被害者の娘であるということがクローズアップされた。
「いわゆる鶴橋事件のあれか…」
鶴橋事件、というのは解説が要る。
暴行犯は韓国まで逃亡した末自殺、被害者は二十人以上という大事件であった。
通常、こうした事件で妊娠がわかると、堕胎に扶助が出る場合もある。
が、どういう経緯かは不明ながら、堕胎できずそのまま出産したようである。
のち、みなみの母は大和川に入水している。
こうして。
みなみは、和歌山の親族のもとへと預けられた。
やがて。
無事に成長したみなみは、中学二年の秋にオーディションでアイドル集団に入ることができた。
が。
犯罪者の娘と差別を受けたり、ディレクターからセクシャルハラスメントを受けたり…といった現実に耐えられず、人気があったにも関わらず退団したのである。
その後の話は、意外にも静が知っていた。
「ミナミのピンサロで働いてたりしてたのは噂になってた」
という。
そのピンサロではいわゆるサービスの最中に強姦されたらしく、
「それから姿を消したのは店長から聞いたんやけど…まさか」
誰もそうなるとは、思っていなかったらしい。