【完】『道頓堀ディテクティブ』
面会室に穆が入ると、

「…あなたがミナミのシャーロック?」

「久保谷と言います」

穆は頭を下げた。

「イケメンって噂は聞いてたけど、噂以上ね」

見ると、貴島みなみは切れ長の目をした、かなりの美少女そのものである。

「せっかくですが誉めても何も出ませんよ」

穆は肩をすくめた。

「ところでなぜ、僕に面会を?」

「あなたに、先に知らせておきたいことがある」

そういうと、

「木槿の殺人事件、知ってますか?」

「あれは迷宮入りみたいなもんですからね」

「久保谷さんにだけ言っておきます…あれは、私がやったんです」

「…えっ?」

「黙っとくつもりだったけど、何となく久保谷さんは分かってくれそうだから」

穆は困惑した。

「あと、一つだけお願いがあるの」

鷹岡まなみに会いたい、とみなみは言った。

「なぜ彼女に?」

「まなみだけは、あたしをいつもかばってくれたし、まなみにだけは謝りたい」

だから会いたい、というのである。

「あなた探偵だよね?」

こんな依頼人だけどお願いします、と言うと、みなみはドアの向こうに消えた。



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