† of Ｔhousand～千の定義

手駒同士が衝突した中間点へ、互いに一足飛びで迫る。

たてがみの合間、耳の付け根付近から延びているキマイラの角と、堅実に錬成された私の炎の刃とが、交わる。

硬質なもの同士がしのぎを削る、甲高い音が雨の中でひときわ響いた。

私の靴裏が、キマイラの蹄が、アスファルトの上をわずかに滑る。

「我と、力で拮抗するか……！」

人間の筋力では、信じられないと現実を否定するキマイラが、

「しかし、剣一本でなにができる!!」

蛇となっている尾で、二撃目を繰り出してきた。

毒牙を雨に滴らせている蛇頭が、気色の悪い掠れ声をあげながら襲いかかってくる。

「っ」

舌打ちも一瞬、牽制のために剣を横薙ぎに振りながら、大きく横へ逃げ飛ぶ。

魔術の効果で超人的身体能力を発揮している今なら、十メートルを一足で跳べた。

「逃がさん！」

しかし、私の回避は見越されている。

即座にこちらへ向き直ったキマイラが、火炎放射の追撃を仕掛けてきた。