† of Thousand~千の定義
顔は見ていないが、おそらくとてつもなく目を細めているだろう。それはもう、狐のように。

いったい誰のせいで、こんな事態になったのか……

私が行動した理由は私の定義に基づくものだが、行動するに至らせる事態を招いたのは、誰あろう一ツ橋なのだ。

「で、礼って? 言っとくけど、教会に入れてやる、とかいう冗談だったら笑うわよ」

不躾に言葉で財布でも叩いてやったつもりだが、どうやら私の短絡的な部分は見透かされているらしい。

一ツ橋は、ほとんど阿吽の呼吸で答えてきた。

「事後処理を、お任せいただきたい」

「事後処理?」

「ええ」

ぱしゃ、ぱしゃ、と軽く小さな足音が、私の横へ移動する。

無数の線が落下してきているように見える黒い夜空しか望めない私の視界に、一ツ橋の長身が映り込んだ。

ヤツは、まるで舞台にでも立っているかのように、両腕を広げた。
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