† of Thousand~千の定義
アルが言う。
「ご飯ができたから、起こしに来たよ。真輝ちゃんが早く来いって、特にね」
その、真輝が、という部分に、苦笑する。
「ったく、あのお嬢さまは……共同生活ゆえのリズム調整ってもんをわかっとらんようだな」
「いや、どうかな――家族なら、食事は揃って食べるものだ、って真輝ちゃんは言ってたからね」
「……ほう、そか」
家族という単語に少なからず、あんな夢を見たせいか、俺の天涯孤独だった時の記憶が、震えた。
「すぐに行く。先に行っててくれ」
と俺はアルを促した。
ヤツが出ていってから、思い立って、ベッドの脇に置いてある小さな机の引き出しを、開ける。
中には、たったひとつの魔術道具がしまってある。
紙ヒコーキ。
魔術道具にして、俺のことを知らないことになったアイツとの、思い出。
一瞬だけ、一瞬だけ、浸る。
そして引き出しを閉じ、思い出も、しまう。
部屋から出て、キッチンへ入った俺は、そこで食卓についている二人へ、訊いた。
「なぁお前ら、ヴァンホーテンのココア、飲みたくねぇか?」
「ご飯ができたから、起こしに来たよ。真輝ちゃんが早く来いって、特にね」
その、真輝が、という部分に、苦笑する。
「ったく、あのお嬢さまは……共同生活ゆえのリズム調整ってもんをわかっとらんようだな」
「いや、どうかな――家族なら、食事は揃って食べるものだ、って真輝ちゃんは言ってたからね」
「……ほう、そか」
家族という単語に少なからず、あんな夢を見たせいか、俺の天涯孤独だった時の記憶が、震えた。
「すぐに行く。先に行っててくれ」
と俺はアルを促した。
ヤツが出ていってから、思い立って、ベッドの脇に置いてある小さな机の引き出しを、開ける。
中には、たったひとつの魔術道具がしまってある。
紙ヒコーキ。
魔術道具にして、俺のことを知らないことになったアイツとの、思い出。
一瞬だけ、一瞬だけ、浸る。
そして引き出しを閉じ、思い出も、しまう。
部屋から出て、キッチンへ入った俺は、そこで食卓についている二人へ、訊いた。
「なぁお前ら、ヴァンホーテンのココア、飲みたくねぇか?」