† of Thousand~千の定義
しかし、こちらの緊張や警戒などその細い目には見えていないのか、

「さあさ、どうぞこちらへ?」

ひらひらと手招きなんぞしやがる。

まさか持ち込んだというのか……?

私の部屋にはなかった急須で、のんきに茶を入れている。

ナニモノダ?

たったそれだけの問いに、男は答えない。

答えるつもりがない……ようには見えない。

まるで、ちゃんと答えは用意しているから少し待て、という雰囲気を感じた、

男の正面に、テーブルを挟んで座る。

そばに来てわかったが、この男、黒一色の見慣れない服――修道衣を着ていた。

信仰者か……蒸し暑い梅雨だというのに、長袖だ。

どこまでも違和感を刺激してくれる……。

コポコポと、初めから湯の入っているらしい急須から注がれる茶は、緑というより黄金色だ。
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