† of Ｔhousand～千の定義

†



さっき私がしまった紙切れを引っ張り出させた一ツ橋は、指でカツカツと差しながら言った。

「見ない公式ですな。天使のアルファベットに漢字……ユダヤの記号も混ざっているようで。これは、独学ですかね？」

「そうよ。もう返せ」

つつかれているかわいそうな札を、さっさと救助する。

おやおやと、一ツ橋に笑われた。

「間違いは見られない、独自の公式……そのすべてが独学。仁さん、なかなかの才能をお持ちですよ」

「あっそう」

その笑みの、なんとムカつくことか。

人を苛立たせる達人の長沢さえもいくつかの行程を踏むというのに、この男はその薄っぺらな笑みひとつで私を不快にさせる。

教会の者、一ツ橋。

私の見立てだが、コイツはただの人間ではない気がする。