† of Thousand~千の定義
まず、ただの人間が私のアンティーク群を魔術の道具と気付くはずがない。せいぜい、乙な趣味と思うくらいだ。

ましてや、私が魔術をかじっているなど、なおさらどうして気付けるものか。

そもそもだ。

死角で構えた呪符の存在、部屋に隠しておいた道具など、『視界に入らないもの』を発見する時点で、一ツ橋は特殊だ。

異常とさえ言える。

窓を打つ雨が、強まっている。バチバチ、バチバチとうるさいくらいだ。

長沢は無事、雨が降る前に帰れれただろうか……?

「ああ大丈夫、彼ならすでに帰宅してますとも」

「!?」

まさか、私の心でも読んだというのか……あまりに絶妙なタイミングで言われる。

警戒するなというほうが、土台無理だ。

「……調べたな? 私だけじゃなく、その身辺も」

という問いに、一ツ橋はくつくつと湯だった鍋のように笑うばかり。

気に入らない。

まるで、ヤツの手の上で転がされているようだ。
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