† of Thousand~千の定義
「それで、ならお前はなにしにここを訪れた? さんざ質問してわかったよな? 私はちょっと魔術をかじった程度の、しがない人間だと」

「――くっ、く……」

「……なにがおかしい」

「いえ、いえ、失礼」

思ってもいないだろう断りを入れた一ツ橋が、ピッと二本指を立てた。

そこに挟まれているのは、さっき回収したはずの、私の呪符。

コイツ……異常だ。

「こんな独自公式を組める人間も、近年では稀有でしてね。その君を『かじった程度の』とは、とても言えませんがねぇ」

「っ、返せっ」

と二度目、札を取り返し――戦慄した。

ポケットの中には、さっきの札が入っている。

つまり……一ツ橋は私の呪符を、複製しやがった。

世界でたったひとり、私しか知らない公式を、ほんの少し眺めていた間に記憶し、一瞬にして。
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