† of Thousand~千の定義
「くっ、く……驚いているようで」

「……っ」

目付きを鋭くしているのに、一ツ橋は笑う。

今しがた、私のことを稀有と言ったにもかかわらず、コイツはその稀有な代物を秒の間に複製したのだ。

屈辱以外の、なにものでもない。

私の怒りに呼応してくれたのか、外が青く光った。轟音が、四半秒遅れて伝わってくる。

「悔しい、ですかな?」

と、一ツ橋が訊ねてくる。

「他者に追いつかれ、模倣される程度の技量、強者を目前で相手にした無力感、己の矮小さ……仁さん、どうです、悔しいでしょう」

「……なにが、言いたい」

訊ね返したものの、彼の口ぶりからひとつ、悟っていた。

今から一ツ橋は、ここへ来た目的を口にする。

これまでの流れ、観察した分で推し測れるヤツの性格、口調や、私へ向けられる目の色――

およそ得られる情報と要素から、私は未来を定義する。
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