† of Thousand~千の定義




魔術は数学に似ている。……いや、数学というほど、難しくはない。

やり方さえ覚えれば、算数レベルだ。1+1ができれば、おそらく誰だってできる。

多少の勘……魔力と言い換えられる才能が必要らしいが、そんなもの、私にはもともとなかった。

まったくもってどうしようもない言い方だが、魔術程度、やろうと思えば、あいうえおを覚えたガキにだってできるとも。

そうだから、私は自惚れなんてできるほどの力、ないと言い聞かせた。

三六五日、繰り返す独学の中で、欠かさず。

しかし、胸くそは、果てしなく悪かった。

慢心しないようにとは、己に言い聞かせていた。


しかしだ。

自信くらい、持っていてもよかったろう?

その自信を、私は無様に踏みにじられた。

術を真似るにも破るにも、それは元来の術以上の力がなければ、上手くいかない。

一ツ橋はそして、完全に私の上をいっていた。
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