† of Thousand~千の定義
迫る捕縛の絹鎖を、
「小賢しいことよ」
「っ!?」
キマイラは開いたアギトからから一喝一瞬、吐き出した炎で、焼尽してしまった。
業火が、大輪を誇る。
余波と呼ぶにはぬる過ぎる熱波が、私にまで届く。
「ゃああ……!?」
思わず顔を覆ってしまった私は、吹き飛ぶ屋根の破片に体を打たれ、落下した。
幸い植え込みに落ちた私を――ふちに歩み寄ってきた猛獣が、見下してくる。
月の臨む空を背に、炎のたてがみを揺らす異形は言った。
「人間、貴様には我を解放した大義がある。せめてそれに報い、命は免じてやろう。――さらばだ、未熟な魔術師よ」
そして獅子は闇夜へ跳躍し、去った。
私はその日、丸々一晩動けず、すくみ、植え込みの中で無様に震えていた。
熱波を受けた肌は熱いのに、おぞ気が収まらなかった。
一歩間違えば死んでいた恐怖……四年前からまったくもって成長していない自分への失望……たった一度の火炎で圧倒された無力感……
私は――魔術師以前に、己の小ささに、泣き震えることしか、できなかった。
「小賢しいことよ」
「っ!?」
キマイラは開いたアギトからから一喝一瞬、吐き出した炎で、焼尽してしまった。
業火が、大輪を誇る。
余波と呼ぶにはぬる過ぎる熱波が、私にまで届く。
「ゃああ……!?」
思わず顔を覆ってしまった私は、吹き飛ぶ屋根の破片に体を打たれ、落下した。
幸い植え込みに落ちた私を――ふちに歩み寄ってきた猛獣が、見下してくる。
月の臨む空を背に、炎のたてがみを揺らす異形は言った。
「人間、貴様には我を解放した大義がある。せめてそれに報い、命は免じてやろう。――さらばだ、未熟な魔術師よ」
そして獅子は闇夜へ跳躍し、去った。
私はその日、丸々一晩動けず、すくみ、植え込みの中で無様に震えていた。
熱波を受けた肌は熱いのに、おぞ気が収まらなかった。
一歩間違えば死んでいた恐怖……四年前からまったくもって成長していない自分への失望……たった一度の火炎で圧倒された無力感……
私は――魔術師以前に、己の小ささに、泣き震えることしか、できなかった。