† of Thousand~千の定義
「仁っ!!」

とだから、私は叫んだ。

叫んで、彼へ駆け寄ろうとした。

が、

「動くな!!」

仁の大声が、私をその場に張り付けた。

紅いラインが組み合わさっている領域――魔法陣の中に、踏み留まらせた。

「魔法陣から出るな。その陣なら、お前ひとりくらい、無事でいられる!!」

「でも、仁が、だけど――」

「ローズっ!!」

名前を叫ばれ、体がすくむ。

また叱られると思った。

が、

「ローズ……かわいいローズ、聞いてくれ」

彼は初めて城を訪れた時のように、人当たりのいい、柔かな顔で言った。

「俺がお前に魔術を教えたのは、『罪』を被るためじゃない。世界の分類を知り、定義を理解することで、お前の見識が広がればいいと思った。籠のような城の外にこそ、世界は溢れていると思わせたかったからだ」

その言葉の最中、彼の姿は右腕に続いて顔、肩、右半身までもが、人間の規格から外れていく。

禍々しい外殻に、覆われた姿へ。
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